吉田 俊郎さん「コミュニティーが持つ力が地域を変えていく物語」

この度、13年の経験を踏まえ、この本が出版されることになったことは、とても嬉しいニュースで本当にありがとうございます。そしておめでとうございます。

心からそう思えるのは、僕は榎本さんとこの活動を始めて、苦楽を共にし、壁にぶち当たり、悩み、そして突き進んで行った時間を共に過ごしたから、この活動を振り返って本にできるということは始めた当初は考えもできなかったからです。

僕がトランジション・タウンという運動に出会ったのはまさにヒデさんからイギリスのカンファレンスに誘われたからに他ならないので、今はライフワークとなったトランジション運動に出逢えさせていただいたことに本当に感謝しています。

僕は仕事を辞めて自然と共に生きることと、世界が少しでも消費社会の物質文明から自らの手で作りながら循環型で持続可能な社会に向かうように何か貢献できることはないかと模索していた時にヒデさんに声をかけてもらいました。ちょうどその頃は僕の転換期に同じパーマカルチャーのコースを1年間受講し、新たな人生設計をし直していた頃でしたので、まあなんとタイミングがいいというか、それを見計らっていたような出会いでした。

何か自分の身近な環境で身近なことで環境活動をしたいと思っていたのでトランジションをフィンドフォーンでその内容をロブホプキンスから講演で聞いた時は、まさに自分がやりたいと思っていたことでした。だから何も躊躇もなくヒデさんの帰国を機にこの活動を始められました。

このトランジション運動は壮大な社会的実験と言われているのですが、この本は実際に藤野という地域でそして日本中でコミュニティーを作りながらそのコミュニティーが持つ力が地域を変えていくという可能性を試した物語です。その中には2011年の東北大震災や福島原発事故から毎年繰り返される気候変動による自然災害のなかで地域の仲間とどんなことを考え、どんな工夫をして、どんなことで助け合えるかという人と人の関係性を作って行ったかという事実を背景にした活動です。実際うまく行ったことも、続かなかったことも、お互い励まし合ったことも、傷つけてしまったこともこの物語には存在します。

この本は自分一人で何も世の中変えられない、環境破壊や社会がより良くなるようなことは自分にはできないという無力感を持っている方や、社会がもっと未来の世代にこの地球という素晴らしい世界を受け渡したいという気持ちはあるのだが、何をしたらいいかわからないという方に手に取って実際にあった物語を読んでいただきたいです。そしてもし心がざわざわしていてもたってもいられなくなったら、楽しく行動に移し、一緒に活動していただきたいとお誘いしたいです。

この本によってさらにトランジションやより良い社会を希望を捨てず行動するという活動が日本に広がることを願ってこの本の推奨の言葉とさせてください。

吉田 俊郎(よしだ しゅんろう)  

NPO法人 トランジション・ジャパン/共同代表理事

2008年に医療機器の外資系メーカー退社後NPO法人トランジション・ジャパンをパーマカルチャー仲間と立ちあげ、持続可能なコミュンティー作りを全国に普及活動に携わる。2011年に半セルフビルドで家作りと地球環境に配慮した自給自足的生活のパーマカルチャーライフを南阿蘇に移住。山の森林作業、自分の住む家作をする一方、エネルギーの自給(オフグリッド)米,野菜など食べ物の自給を地域の仲間と学びながらトランジション・タウン南阿蘇で、地域通貨で〜らを立ち上げ新しいコミュニティーの実験中。日本でのトランジション・タウン活動をしながら、世界のトランジションの中まで組織しているトランジション・ハブ・ハート・サークルのメンバーとしてアジアのトランジションのネットワークの取り組みを始めている。