武井 浩三さん「収奪的な資本主義の次に生まれる、新しい経済を象徴する1冊」
著者の榎本英剛さんと知り合ったのは、実は本当にごく最近のことです。信頼の置ける友人2人から「武井さんとヒデさんを引き合わせたい!」と、全く別ルートで同時期に言われたのでした。
早速ヒデさんのプロフィールをインターネットやYoutubeで調べていくのですが、読めば読むほど、知れば知るほど驚きが募りました。生まれも育ちもキャリアも世代も異なるヒデさんの活動の全てに、私は共感したのです。
私は自然(じねん)経営研究会という社団法人や、在住する世田谷で活動する地域NPO、共感資本社会の実現を掲げ地域コミュニティ通貨の発行プラットフォームを運営する株式会社eumo、ポスト資本主義をキーワードに地方創生の支援活動を行うNext Commons Labなどの経営に携わっています。
本書の主題である「トランジション・タウン」は、持続可能な社会や経済活動へ「トランジション(移行)」してゆこうという活動なわけですが、奇しくも私の活動領域とほとんど全てが一致していました。
食、エネルギー、コミュニティ、通貨、自然との調和。
場所は違えど、同じ願いを持ち、実践を重ねる人はすべからく同じ領域に関心を持つのだと言うことを、改めて思い知らされました。
ヒデさんは人間の内面を深く探求するコーチングという職業から、「生きる」という生命観を会得された方だと、私は勝手に認識しています。「生きる」を追求した時に、一人では生きられない、また人類は人類だけでは生きられない、いわゆるメタ認知と言いましょうか、そうした一つ大きな括りでもって「生きる」ことを認識され、そのために年々活動の範囲を広げていらっしゃるのだと思います。
推薦文にて書籍の内容を紹介することは下世話に感じるもので、内容を皆さまに共有したい思いを抑えながら筆を取っております。
「トランジション・タウン」は「移行」ではあるけれども、厳密には「戻る」ということでもあると思っています。今、日本のみならず世界全体が大きな転換期に入りました。(差し掛かる、と表現するには遅いと感じました)
調和した生き方を自らも実践追求され、「トランジション・タウン」が日本に広がったことの立役者であるヒデさんは、間違いなく次代のリーダーです。そして恐らく彼は、人間が人間らしく地球と調和して生きていく上で「トランジション・タウン」の次の概念や方法すらも編み出し、世に広げていくことと思います。
本書は、収奪的な資本主義の次に生まれる、新しい経済を象徴する1冊であると思います。ぜひお手にとって頂き、地球と調和した生き方や考え方、実践と工夫の数々に触れて頂きたいと願ってやみません。
武井 浩三(たけい こうぞう)
社会活動家、社会システムデザイナー
1983年、横浜生まれ。
高校卒業後ミュージシャンを志し渡米、Citrus College芸術学部音楽学科を卒業。帰国後にCDデビュー。アメリカでの体験から起業するも、倒産・事業売却を経験。
「関わるもの全てに貢献することが企業の使命」と考えを新たにし、2007年にダイヤモンドメディア株式会社を創業。
会社設立時より経営の透明性をシステム化。「給与・経費・財務諸表を全て公開」「役職・肩書を廃止」「働く時間・場所・休みは自由」「起業・副業を推奨」「代表・役員は選挙で決める」といった独自の「管理しないマネジメント思想」は次世代型企業として注目を集める。
2017年には「ホワイト企業大賞」を受賞。ティール組織・ホラクラシー経営等、自律分散型経営の日本における第一人者としてメディアへの寄稿・講演・組織支援などを行う。2018年にはこれらの経営を「自然(じねん)経営」と称して一般社団法人自然経営研究会を設立、代表理事を務める。組織論に留まらず、「自律分散・循環経済・重なり合い」をキーワードに、持続可能な社会システムや貨幣経済以外の経済圏など、社会の新しい在り方を実現するための研究・活動を多数行なっている。
不動産領域におけるITサービスの普及活動にも尽力し、2018年に一般社団法人不動産テック協会を設立、初代代表理事を務める。一般社団法人LIVING TECH協会理事、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会IT部会幹事、国土交通省公益遊休不動産活用プロジェクトアドバイザー、住宅地盤情報普及促進委員会委員などを歴任。
現在は、鎌倉投信創業者の新井和宏氏が立ち上げたコミュニティ通貨のプラットフォームを運営する株式会社eumoのボードメンバーとして新しい金融に関わりながら、SDGs、組織開発、フェアトレード、地方創生等、多数の営利非営利企業にてボードメンバーを務める。
世田谷区における地域活動ではNPO法人neomuraの理事として地域のお祭りや清掃活動、情報発信を行う。2019年の世田谷区ふるさと納税キャンペーンのエバンジェリストにも選出される。